A. 「医薬分業」とは

   2つの意味合いがあります。
 一つめは、医師は診察、診断し、治療のために薬を処方する。薬剤師が出された処方箋に基づいて薬を調剤し患者さんに手渡す、ということです。 そのような考えは明治時代からあり、現在の法律も基本的にはそのような考えに沿っています。しかし、薬剤師が少ないなど様々の理由から完全に実現することは困難なため一定の条件のもとでは、医師が、自身が診察した患者様の薬の調剤については認められています。このため当院のような薬剤師のいない医院でも薬を出すことができるのです。
 二つめは、薬の調剤は薬剤師が行うことは同じなのですが、同一の病院内での薬局ではなく、市中の調剤薬局の薬剤師によるものであるということです。
 院内薬局は診療と調剤が同じ経営体であることから診療や薬局運営に様々の歪みが生じやすいとして好ましくないとされました。病院と薬局は利害関係を持たない異なった経営体であるよう指導が行われています。
 現在「医薬分業」と言う時、この二つめの意味で使われることが多いのです。 医師は治療のため薬を出すときは、院外処方箋を発行します。処方箋には薬の内容が書いてあります。患者様はこの院外処方箋を受け取って調剤薬局で薬剤師に調剤してもらい薬をもらうようになります。


B. 薬を手に入れる方法

 体の調子が悪い時、薬を手に入れる方法は大きく分けて2つあります。
 一つは町の薬局、薬店に行って、薬を買う方法です。最近は、これまで病院の処方箋がなければ手に入れることができなかった医療用医薬品のうち、薬局で薬剤師に相談すれば直接買えるようなものも増えてきています。
 もう一つの方法は病院にかかって診察を受け、保険診療として必要と考えられた薬を処方してもらう方法です。
 薬をもらう時には院内処方と院外処方の二通りがあります。 
 院外処方は「調剤薬局」で薬をもらいます。「保険薬局」「基準薬局」「保険調剤」「処方箋受付」などの表示のあるところであれば薬をもらうことができます。病院の近くでも自宅近くでも自分で薬局を選ぶことができます。
 院内処方と院外処方ではかかる費用や手間ひま、調剤の待ち時間、薬の説明を十分受けられるかどうかなどいろいろ違いがあります。 


C. 国の「院外処方」のすすめ

国は、院内処方の様々の歪みを是正するとともに、医療費抑制を目指して、院外処方にするよう指導しています。
 医療費抑制のためには、院外処方の推進とともに、薬価をできるだけ低く抑えたり、後発医薬品の使用を増やしたり、「スイッチOTC」といってこれまで医師の処方箋のもとに出されていた薬を市販薬に切り替えて保険医療からはずすこと、などを進めています。 
 昨年度、国全体の院外処方箋の発行枚数は50%を超えたとのことです。


D. 「院外処方」とは

 @ 科学技術の進歩によって薬剤も新しいものが次から次へと開発されています。そうした薬剤によってこれまで治療が困難な病気の多くが「治る」病気になり、新たな時代の到来といわれるようになってきています。そうした朗報の反面、思いがけない副作用に遭遇することも多くなってきています。
 患者様がそうした薬の恩恵を受けられるとともに、薬の副作用、相互作用などについてもきちんとチェックするシステムが必要になっています。こうしたことは、一病院、一医院だけでは対応が困難で、新たな仕組みが必要と思います。
 調剤薬局を「かかりつけ薬局」とすることにより、薬剤師から、複数の病院および診療所の処方箋について患者様ごとの「お薬に関する記録(薬歴)」が作成され、重複や飲み合わせの確認とともに、薬の効き目や飲み方・使い方、アレルギーや副作用などについて、より専門的な立場から、わかりやすい説明を受けることができます。そして患者様からの相談を受けてもらえます。
 患者様が自分自身の病気やその治療に対して、より理解を深め、病気とつきあってゆくことができるだけでなく、医療チームとして薬剤師さんに加わってもらうことによって、医師と薬剤師、薬局同士の連携を深めることができ、より安全で適切な医療を実現できるようになると思います。

 A 院外処方の良さを発揮するためには、患者様の病気や使っている薬のことをよく把握してくれ、、何でも相談できるような薬局が、身近にある必要があります。このような薬局を「かかりつけ薬局」と呼んでいます。
 そのような薬局はどの程度整備されているでしょうか。
 今のところ薬局によってサービスの内容はかなり異なるようです。また薬局数も地域によってばらつきがあります。病医院が一方的に特定の薬局に患者様を誘導することは禁じられ、患者様は自由に薬局を選べることになっています。
 病医院の近くで薬をもらう方が多いと思いますが、是非、よい「かかりつけ薬局」を意識的に持たれることを願っています。

 B 医療費について
 病医院では診察料、検査料、処置料、処方箋料などが、調剤薬局では薬代、調剤料、指導料などがかかります。
 一般的に院内処方に比べますと、薬剤師の技術料により若干高くなります。そのため患者様の自己負担分も多くなります。
 @で述べたような院外処方の意義を考えると、このような負担はやむを得ないものとも考えられます。

  C 「二度手間」について
 院内処方の時は、病院内で診察に引き続き、薬をもらうことができます。院外処方では病院で診察を受け、薬があれば処方箋をもらい、会計をして帰ります。その後、薬局に行き、処方箋に基づき薬を調剤してもらい、会計をして帰ります。病医院を受診する時と同じように、薬局へ行くための交通手段や、待ち時間なども問題になります。当院でも、何人かの患者様から、院内処方なので負担が少なくありがたい、というご意見をいただきました。今後こうした面で、これまでよりご負担をおかけいたしますことをお詫びいたします。



 当院が院外処方にすることによって、様々ご不便、ご迷惑をおかけすることがあるかと思います。院外処方のシステムはまだ発展途上にあり、少しずついろんな面で改善されてゆくことと思います。当院もよりよいシステムになるよう努力する所存です。ご協力のほどよろしくお願いいたします。